「ハルちゃん・・・これ・・・何?」
ああしまったと思った。いつもそうだ。ヤバイかも、という危険信号はちゃんと存在しているはずなのにその後に「まあいいか。」が続く。打開策はいつも存在しない。結局何もしない。
見つかるかもな、とは思っていた。「まあいいか。」と特別に隠すことはしなかった。
でも、俺にしては充分隠している。俺に言わせれば隠しているのではなく大切に保存しているだけなのだが。だって、直接置くのはなんだか寒々しかったのだ。―桃色の箱。この箱どこで買ったんだったかな。ゆかりに見せたらきっと喜ぶだろう。ゆかりの好きな桃色。だけどそれだけが理由じゃない。可愛らしい曲線。見ていると何となく食べたくなってしまうような、そんな綺麗なケース。―と、いうようなことをゆかりはきっと言うだろう。ゆかりはキャラに似合わず非常に文学的なことをたまに言う。いやきっと、もともと文学少女だったのだろう。本質的にはそうなのだろう。ゆかりはそれを隠していた。そう、考えてみればそういうやつだった。本当は凄く繊細なのに大雑把な表情、キャラクター。俺はといえば、とるにたらない男だ。ゆかりはいつも「バリバリ体育会系さわやか男子」が好きだと話していた。しかし俺は吹奏楽部。文化系だ。しかし問題なことに、俺は文化系と言っても全く文化人ではない。ゆかりの話に出てくる小説家の名前はほとんどわからなかったし、正直言えば、ゆかりのどこか回りくどい、いわゆる文学的な表現は、ちっとも理解できなかった。
ただ、俺はなんとなく感じることは出来たのだ。ゆかりの綺麗だと言うものを俺も綺麗だと、いつも思えた。なんとなくきらい、というものを俺もなんとなくきらいだと、心から思えた。意味はさっぱりだけれどゆかりの使う比喩表現は、殊に美しかった。だから、わかる。ゆかりはこの箱を見たらきっと溢れんばかりの笑顔で、可愛いと叫ぶんだ。
だからかもしれない。この箱が可愛かったからだろう。茜がこれを開けてしまったのは。茜もこの箱を見て、可愛いと思ったのだろう。だから思わず蓋を開けてしまったのだ。だとしたらしかたない。
それにしても、なんというだろうか茜は。俺の事をどう思っただろうか茜は。気になる気がする。気にならないような気がする。
茜と対峙しているとき、俺は俺に自身が持てない。自分の感情に自身が持てないのだ。好きな気がする、でもそうじゃない気もする。茜とこれからも一緒にいたい気がする。でもそうじゃない気もする。ひとまず、綺麗じゃないことは確かだ。他の女よりも好感を持っていることは確かだ。だから今のところは一緒にいる。それで問題はない。もしかしたらいつか、自分の感情に自身が持てる日が、くるかもしれないのだから。来ない気も、するけれど。
ああしまったと思った。いつもそうだ。ヤバイかも、という危険信号はちゃんと存在しているはずなのにその後に「まあいいか。」が続く。打開策はいつも存在しない。結局何もしない。
見つかるかもな、とは思っていた。「まあいいか。」と特別に隠すことはしなかった。
でも、俺にしては充分隠している。俺に言わせれば隠しているのではなく大切に保存しているだけなのだが。だって、直接置くのはなんだか寒々しかったのだ。―桃色の箱。この箱どこで買ったんだったかな。ゆかりに見せたらきっと喜ぶだろう。ゆかりの好きな桃色。だけどそれだけが理由じゃない。可愛らしい曲線。見ていると何となく食べたくなってしまうような、そんな綺麗なケース。―と、いうようなことをゆかりはきっと言うだろう。ゆかりはキャラに似合わず非常に文学的なことをたまに言う。いやきっと、もともと文学少女だったのだろう。本質的にはそうなのだろう。ゆかりはそれを隠していた。そう、考えてみればそういうやつだった。本当は凄く繊細なのに大雑把な表情、キャラクター。俺はといえば、とるにたらない男だ。ゆかりはいつも「バリバリ体育会系さわやか男子」が好きだと話していた。しかし俺は吹奏楽部。文化系だ。しかし問題なことに、俺は文化系と言っても全く文化人ではない。ゆかりの話に出てくる小説家の名前はほとんどわからなかったし、正直言えば、ゆかりのどこか回りくどい、いわゆる文学的な表現は、ちっとも理解できなかった。
ただ、俺はなんとなく感じることは出来たのだ。ゆかりの綺麗だと言うものを俺も綺麗だと、いつも思えた。なんとなくきらい、というものを俺もなんとなくきらいだと、心から思えた。意味はさっぱりだけれどゆかりの使う比喩表現は、殊に美しかった。だから、わかる。ゆかりはこの箱を見たらきっと溢れんばかりの笑顔で、可愛いと叫ぶんだ。
だからかもしれない。この箱が可愛かったからだろう。茜がこれを開けてしまったのは。茜もこの箱を見て、可愛いと思ったのだろう。だから思わず蓋を開けてしまったのだ。だとしたらしかたない。
それにしても、なんというだろうか茜は。俺の事をどう思っただろうか茜は。気になる気がする。気にならないような気がする。
茜と対峙しているとき、俺は俺に自身が持てない。自分の感情に自身が持てないのだ。好きな気がする、でもそうじゃない気もする。茜とこれからも一緒にいたい気がする。でもそうじゃない気もする。ひとまず、綺麗じゃないことは確かだ。他の女よりも好感を持っていることは確かだ。だから今のところは一緒にいる。それで問題はない。もしかしたらいつか、自分の感情に自身が持てる日が、くるかもしれないのだから。来ない気も、するけれど。
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